水中も測量可能!?グリーンレーザースキャナ搭載型ドローンとは
近年、異常気象による豪雨で河川氾濫などの被害が多く発生しています。豪雨災害の対策の1つとして、堤防や河床など地形の詳細を3次元で把握することが必要となります。そこで注目されているのが、グリーンレーザースキャナ搭載型ドローンです。従来の測量に比べて、より効率的に高品質でシームレスな水陸地形3次元測量データを作成できます。
グリーンレーザースキャナって何?
まず、グリーンレーザースキャナとはなんなのでしょうか。
■グリーンレーザースキャナの特徴
グリーンレーザースキャナの大きな特徴は、水深約0~3mまでの浅水域の測量が可能な3次元計測機器であるということです。
従来の水中測量で使用されている音響測深機は、船が行けない浅水域の地形は正確に測れませんでした。なぜならば音響測深機を船底に取り付ける必要があったからです。
しかしグリーンレーザースキャナは、軽量化・最小化されているのでドローンに取り付けることができます。ドローンに取り付けることで、従来の音響測探機では正確に計測できなかった浅水域の測量を可能にしました。
■水中も計測できる原理
グリーンレーザースキャナは、近赤外線レーザーと緑色のレーザー光を同時に測量地点に向けて照射します。水面反射する近赤外線レーザーと水を透過して水底で反射する緑色のレーザー、それぞれがスキャナ本体に返ってくるまでの時間の差から水深が算出できます。それを繰り返すことによって、シームレスな水底地形の3次元測量が可能となります。
■グリーンレーザースキャナで作業の効率化
グリーンレーザースキャナを使用して測量することで、作業の時間と手間を最小化できます。それは、グリーンレーザースキャナを使用すれば陸上と水中の計測を連続でできるからです。
従来の測量方法では、陸部の測量と水底の測量を別々に行い、得たデータを合成する必要がありました。しかしグリーンレーザースキャナを使用すれば、陸部と水底の地形を無駄なく測量できるので作業効率が上がります。
■濡れた地面などの黒色も測量可能
従来の近赤外線レーザーは黒色の対象物を測量できません。濡れて黒くなった地面なども測量できなかったため、乾くのを待つ必要がありました。しかしグリーンレーザースキャナは黒色も測量可能です。
グリーンレーザースキャナ搭載型ドローンの活用事例
それでは、グリーンレーザースキャナ搭載型ドローンはどのような分野で活用されていて、今後どのような分野に活用されていくのでしょうか。活用例を見てみましょう。
■河川管理
堤防から河川敷、河道を一度にグリーンレーザースキャナで測量し、高精度の3次元モデルを生成できます。水陸がつながった面的な3次元モデルは、河道状況の把握や河川の維持管理にとても役立ちます。
■災害時の緊急測量
災害時の活用例はさまざまな場面が考えられます。たとえば土石流災害が起きた際に、差分解析で地形変化を把握して2次災害を防ぐために活用できます。緊急時や時間がない・危険がともなう場合に大いに活躍してくれます。
■港湾管理
グリーンレーザースキャナで測量したデータを港湾構造物(堤防やテトラポットなど)の管理にも、活用できます。
■大規模開発にともなう地形測量
グリーンレーザースキャナ搭載型ドローンで測量した3次元モデルを基に計画を進めることができます。
■i-Construction
国土交通省が推進しているi-Constructionは、測量から設計、施工、検査、維持管理に至るすべての事業プロセスでICTを導入することにより建設生産システム全体の生産性向上を目指す取組みのことです。
業界全体としてグリーンレーザースキャナ搭載型ドローンの活用が進められています。このように、今後さまざまな形でグリーンレーザースキャナ搭載型ドローンは活用されていくでしょう。
ドローン開発はどんどん進歩している
ドローンの活用の幅は大きく広がっています。それに伴いドローン本体の技術はますます進歩していくことでしょう。
■飛行時間の延長
従来の測量方法に比べると作業時間は短いですが、一般的に測量で使用されるバッテリー式ドローンの多くの飛行時間はまだまだ短いです。しかし、高性能なバッテリー式ドローンの開発が進めばより広範囲を短時間で測量可能になります。
■防水・耐風性能の向上
ドローンにとって、強すぎる風や雨は天敵です。風が強いと正確な測量ができず、雨が強い場合も同様です。しかし耐水・耐風圧に特化したモデルの開発も進んでいるので今後さらなる進化が期待されます。
■法規制
2015年に改正航空法が施行され、ドローンの基本的な飛行ルールが定められました。翌年には、重要な施設の周辺地域でのドローンの飛行を禁止するドローン規制法が施行されました。
また、ドローンでの測量においても2016年に「無人航空機(UAV)を用いた公共測量マニュアル(案)」が国土交通省の国土地理院から出されています。このようにドローンやドローン測量はまだまだ新しい分野なので、法律も年々進化しています。
国土交通省は令和5年度までに小規模なものを除くすべての公共⼯事について、BIM/CIM活⽤へ転換する⽅針を公表しています。インフラ分野でのBIM/CIMの活用が推進されると、3次元測量の需要も自然と高まっています。災害対応の需要以外にも、グリーンレーザースキャナ搭載型ドローンの需要は今後さらに高まっていきそうです。